美術大学で非常勤講師をやらせてもらってる僕なんですが、担当させていただいた授業は前期のみだったので、ちょっとタイミング的には随分遅くなってしまったのですが、前期の授業を振り返ってみます。

授業内容

僕のやってた授業は新入生の1年生が対象で、パソコンを使ってグラフィックソフトの使い方を習得しつつ、いくつかの課題作品を作ってもらうものです。

ほとんどの生徒さんが、学校を通じてアップルのノートパソコンを購入し、そこにアドビのグラフィックソフト「イラストレータ」と「フォトショップ」をインストールし、その使い方を習得し、それらを使って名刺や暑中見舞いのハガキ、写真のコラージュやリーフレットなどを作ってく授業です。

ここから時間軸に沿って書いていきます。

3月

終わってみると前期は完全にズームを使ったオンライン授業だったのですが、コロナウィルスの影響で前期授業が完全にオンラインでやることに決まったのは3月末くらいだったかな。それまでは、対面でやるかどうかをギリギリまで大学内では検討されていたみたい。やはり実技のある学校だから、オンラインで何が出来るかは手探りだっとんだと思う。常勤の先生からはオンライン授業へのこころづもり言われましたな。

授業用にウェブカメラを購入しようかと思ったけど、もうネット上では評判のいい商品は売り切れで、あったとしても定価の1.5倍くらいの値段が付いて割高になっていた。もちろん実店舗でも、僕が買おうかと思っている価格帯のカメラは売り切れ店がほとんど。そこで僕は、スマホにズームのカメラに使えるアプリをインストールして使ってみてました、事前のテスト用で。

4月〜5月前半

4月の後半からはズームを使ってのオンライン授業が始まっていたようだけど、僕の担当授業がまだ始まらなかった。当初予定されていた学年暦(スケジュール)だと、とっくに始まっているのだけど、今年は常勤の先生がいくつかの専攻と一緒に全体課題をやって、オンライン授業の慣らし運転みたいなことをやってくださっていたこともあって、僕と同じようなポジションの非常勤講師が担当する授業は全体的に遅れてスタートすることに。

僕の方はこの時期に、授業で使う素材をオンライン用に調整してまして、案外時間が掛かったなぁ。 おまけに今年はコロナウィルスの影響で、パソコンの出荷が遅れるようで、5月のゴールデンウィークまでに、生徒さんの手元にパソコンを届けるのは無理っぽい話が流れてきていた。

それと自分の作業してる環境では、スマホのカメラでズームに参加するのは何かとやりにくいことが分かり、今なら1万円ほどで売っている商品を、背に腹は変えられないんで2万円出してウェブカメラを購入。この前にも安いの買って失敗し返品したりしてたので、もう諦めて割高だと分かっていつつも買いましたわ。

5月GW明け

ズームを使ってのオンライン授業がやっとスタート。だけど、生徒さんの手元には注文済みのパソコンが未だ届いてない。でも生徒さんのスマホ所有率が100%ということもあり、生徒さんはスマホで参加。
ここでやってたのは、最終課題で作る作品のプランニングと手描きベースのラフ案作成。進捗チェックは、ノートやスケッチブックに書いたものをスマホのカメラで撮影、それをメール添付で僕に送ってもらう。それに添削して返すってのをやっていたのだけど、これが結構たいへんだった。 対面授業であれば、簡単に済むことでもネットでやるとなると、いちいち手間が掛かって難しかったかな。

6月〜

やっとパソコンを使っての授業スタート。事前に分かっていたことだけど、授業を受ける環境が問題に。
対面授業の時は、パソコンではグラフィック作業をするだけなんだけど、オンラインとなると、授業を受けるのも、グラフィック作業をするのも1つの同じパソコンということも考えられる。

パソコン1つでズームの授業画面見て、グラフックソフトに切り替えて作業するのは厳しいから、可能であれば、グラフィック作業するパソコンとは別に、ズームの授業を見る端末を用意して欲しいところ。たぶん生徒さん自身も出来る範囲で試行錯誤して、自分がやりやすい環境を模索してくれたと思うが、20人ほどのクラスで下記のような環境で受講してくれてたみたい。

 

1割:作業用パソコンA + ズーム用パソコンB
2割:作業用パソコン + ズーム用タブレット
5割:作業用パソコン + ズーム用スマホ
2割:ズームと作業を1台のパソコン

クラスの半分が「パソコン+スマホ」で授業を受けてくれていたのだけど、3人ほどはスマホの調子が悪いようで「パソコン1台」で参加だった。

ズームの画面共有で、僕がグラフィックソフトを触っている作業画面を見てもらう時間が多いのだけど、小さいスマホ画面で見ていたり、パソコン1台でやってる生徒さんには、1回の説明では見逃したりもするだろうから数回説明しながらの授業進行でした。生徒さんの理解度や進捗状況が、やはり対面と比べると確認しづらい。

そんなこともあって、パソコンを使っての授業が始まって早々にズームの画面録画機能も使い、復習用に録画することに。 ほぼ丸々ズームのオンライン授業を録画。授業が終わってから、その日のうちにYoutubeにアップし、クラスの授業連絡に使っているページで告知するのがルーチンに。

〜7月〜

グラフィックソフトの基本的な使い方を紹介し、用意した練習用の素材をやりつつ技術を習得。そして課題の作成、進捗チェック、提出と合評。このパターンで、4つほどの課題を作ってもらう。

6月は線画やレイアウトが得意な「アドビ:イラストレータ」を触っていて、7月は写真加工が得意な「アドビ:フォトショップ」を使っての授業。どうもこちらの方が直感的に触れるのか、生徒さんのリアクションも良かった印象。イラストレータの方で、馴染みのないツールに苦戦した下地があってこその反応だと思う。

課題の合評で、生徒さんにも制作意図などを話してもらうのですが、その時にどうも4月に入学してから学校に行ったことがない生徒さんがほとんどだったのを知り、ズームのバーチャル背景で学内写真を利用。授業開始時のアイドリングトークで学内の話をしてました。自己満足になってしまうけど、受講する生徒が揃うまでのいい繋ぎに役立ちました。

〜8月

最終課題を提出してもらい、作品をウェブページに掲載して合評。そしてオンラインでの授業は終了。
作ってもらった課題作品は、僕が学校でプリントアウトして生徒さんへ郵送。パソコンの画面で見ているものと、プリントアウトされたものとの感覚的なズレを経験してもらうのが、制作以上に重要だったりもするんだけど、みんながプリンタを持ってる訳ではないので郵送対応に。

昨年も同じ内容で授業をやり、作った作品を大学が運営している繁華街にあるギャラリーで僅か3日ほどだけど作品展示をしました。でも今年はギャラリー自体に空いている期間がなかったもこともあってか、展示は無しに。
僕としては、課題制作も大事だけど、こういったギャラリーでの展示までやるのがいい経験になると思ってるだけに残念でしたな。

終わってみて思うこと。

手を動かして何かを作る授業は、やはりオンラインで出来ないことはないけど、厳しいんじゃないかと僕は思うなぁ。
みな真面目に課題作品は作ってくれていたけど、特に印刷用に作ったデータをプリントアウトして試行錯誤して欲しかった。モニタとのズレもそうだけど、すんなりキレイに出来るより、失敗しながらそれを直して覚えるほうが僕は身に付くと思うんよね。
やはり、面識のない1年生どうしの生徒さんでは、横の繋がりが出来にくい。

来年どうなるのか、未だ何も決まってないし、引き続き声が掛かるかどうかもわからないけど、コロナが収束して無くなってしまうことはないだろうし、うまく付き合っていくしかないだろう。
ズームを使ったオンライン授業が、授業形態の一つに普通にあるんだろうけど、最大限の注意を払いつつ、対面での授業が僕はいいな。