本をいただきました。そのタイトル「届くデザイン」の、私がセミナーなどで常々お話ししている「伝わるデザイン」との類似性にまず驚きました。デザインは、格好良く出来ていたり綺麗に出来ていたりするだけでは十分ではなく、ターゲットに届く(伝わる)事によって本来の目的が達せられる事となるというのが「伝わるデザイン」の主要テーマです。

ただこの本はカバーに巻かれた帯(腰巻)でも察せられるようにプロ(およびプロを目指すひと)のために書かれた本であす。後半は主にリクルートについて頁が割かれている。つまり「届く」という対象はもちろん広告を伝える人々も含まれるであろうけれども、リクルート先の会社の人事担当者も指しているのでしょう。

だからいつもこのコラムを読んでいただいている方々(アマチュアながら広告制作をがんばっている方々)には少しピントがずれた部分もあるかもしれません。しかしもちろん、今コラムを読んでいる読者にとって普遍的で価値のあるメッセージも多く含まれます。

たとえば、自分が作ろうとしているものと同テーマの広告物をたくさん見てみる。チラシなら持ち帰ったり、ポスターなら写真に撮って集めよう。集めた資料の中から、(自分の判断で構わないので)良いものと悪いものを選り分けて、その広告がなぜよく見えるのか、なぜ悪く見えるのかをよく考えてみるということ。

デザイン関係の本はサンプルの図版をメインで掲載することになりどうしても文章は添え物的な存在になる。しかしこの本は文章で語ることに徹底的に拘り、図版を1点も掲載していないのもまた清々しい。図版を参考に「こうレイアウトすれば良いのか」と納得するのは簡単だけども、本当は「見た目」を真似るより「考え方」を真似る方がより良いデザインに近づくだろうと私も思います。

少し対象から外れていると思われる方も、自分のデザインが良いのか悪いのか判断に躓いている方は、この本を読まれるのも一興かと思います。

「プロだけが知っている届くデザイン」
鎌田隆史著
旬報社
定価1700円+税