寒暖差の激しいパンチのある気候が続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。子供の頃は日本は四季のある美しい国だと教わりましたが、いまは四季の境界が曖昧ですね。暑い夏と寒い冬の間に緩やかに橋渡しをする春や秋がある筈なんですが、最近は一足飛びに暑くなったり寒くなったりするのでなかなか身体が順応できません。そんな時は、とにかく寝るですね、私の場合。

さて、私のコラムでは「伝わるチラシの作り方」というテーマで前回よりチラシ作成のポイントを綴っております。前回は「広告」と「お知らせ」と題して、元々そのチラシに関係のある方に届けられる「お知らせ」と、関係のない方に届けられる「広告」との違いをお話ししました。今回は、ではそういう関係のない方に如何に興味を持って見ていただく(手に取っていただく)かという話をしたいと思います。

まず、あなたが机に向かってチラシを作り始める前に最初にぜひ実行していただきたい事があります。それが「現場百遍」です。現場百遍は警察用語で、事件現場にこそ解決への糸口が隠されているので捜査に行き詰まった時には何度でもそこへ足を運ぼうという意味です。チラシ作りも同様です。チラシ作りの現場とは、あなたが作るチラシが置かれる場所、掲示される場所です。そこへ足を運んでそこが今どのような様子になってるのかをよく観察すること、それがチラシ作りの「現場百遍」です。チラシが置かれるテーブルやスタンド台、貼られる掲示板がどんな色をしてるか。そして、そこはたくさんの人が行き来する駅前の広場か、または区役所の狭い通路か。掲示板が緑色なら緑の紙でチラシを作るとあまり目立たないかもしれませんし、逆に赤い紙で作るとよく目立つかもしれません。狭い通路なら誰もが目に留めていただける可能性が高いかもしれないし、駅前の雑踏なら目に留めていただくには少し工夫が必要かもしれません。そして、あなたのチラシの周囲には一体どのようなチラシが同時に並ぶのか。白い紙に印刷したチラシが多ければ緑の紙のチラシにすれば良いかもしれないし、パソコンで作られたチラシが多ければ手描きのチラシ、カラフルなチラシが多ければ逆にモノクロ単色で作ったチラシが目立つ場合だってあります。

つまり、私たちはチラシを作る時、そのチラシの中身だけを見てよく出来たとかうまくいかなかったとか判断しがちですが、チラシはそのものだけで良い悪いを判断できるものではなくて、その置かれる場所によって本当に効果が発揮できるかどうかが大切なことなんです。だからこれからチラシを作ろうという方は、ぜひその現場へ行って自作のチラシがそこに置かれたときを想像することから始めてください。そして行き詰まった時もまた現場へ戻って他の方が作られたチラシをゆっくり眺めてみるのも良いかと思います。

そして、もう一つ大切な事が「ないを探す」ということ。まぁ簡単に言えば、先ほども書きましたが、そこにカラフルなチラシばかりが置かれているのなら、じゃあこちらは渋目のチラシを作ってみようかなという発想です。写真を使ったチラシが多ければイラストを使ったチラシを考えてみます。この「ないを探す」というプロセスはチラシ作りだけではなく、ものづくり全般に言えると私は思っていますが、物や事が溢れている現代での創作の基本は必ずしも新しい今までに無かった事象を生み出す事ではなく、世の中には溢れているけれど何故かそこにはないものを探す事だと思っています。あなたが、そこにないものを見つける事ができれば、とりあえずチラシづくりの最初のステップは成功です。

何か新しいもの、素敵なものを作ろうと思っても、実際出来上がってその場所に置いてみれば案外普通のものだったなぁということも多いです。だからスタート地点を机に向かうことから始めるのではなく現場から始めようというのが今回の「現場百遍」と「ないを探す」という提案です。チラシ作りにおける現場は、スタート地点でもありゴール地点でもあるのです。

さて、次回からはいよいよ実際のチラシ作りの具体的なお話をしていきたいと思っております。現代、気候も社会もハイスピードで変化していきます。自分では「あれれ、こないだ初詣行ったと思ったらもう早6月だな」と軽い気持ちで思ってるんですが、世の中は確実に半年分変化してるんですよね。日々自分のことにばかり気を取られがちですが、自分自身をガラパゴス化しないために、寝てばかりじゃなくて時には世の中の風景をゆっくり足を留めて眺めてみる事が本当に大事だなぁと自戒の念を込めまして、今回は筆を置きたいと思います。